ATELIER MUJI GINZA「考える。益子の新しい伝統に向けて」展

複合的なデザイン文化の交差点として無印良品 銀座6Fに設られたATELIER MUJI GINZAは、LibraryやLounge、Salonなどと共に2つのGalleryがある。今回の展示は、その2つのGalleryのうちの1つで、ガラス壁で囲われたGallery1で行われた。

無印良品は、イタリアデザインの巨匠エンツォ・マーリ(Enzo Mari 1932~2020)との対話から生まれた取り組みである「栗の木プロジェクト」として「目先の経済を優先するのではなく、栗の木を植えるように長く持続し未来の人々に実りをもたらすこと」を目指した展覧会を行ってきた。
今回の展覧会では、マーリが1970年代に手がけた器<SAMOS>シリーズで実践した、職人とデザイナーの対等な対話によってクオリティを生み出す手仕事の手法から発想を得て、益子町の製作グループMASHIKO ProductとATELIER MUJIのデザイナーチームが協働して、対話し考えるワークショップを通して生まれた150点以上の試作や制作時の道具と<SAMOS>の展示を行った。

具体的な設計計画に入る前に、益子焼という伝統の現状を理解した上で、益子町でのワークショップ段階から参加し、どんな対話と考えの中でどんな展示品群が生まれてくるのかを観察した。
ワークショップでは、様々な試行錯誤が行われ続けているため、当然のように整理されて説明しやすいシンプルなプロセスに沿って制作が行われるわけではなかったし、その場でなにかしらの明確な解答に着地するわけでもなかった。また、ワークショップの意図は、展覧会のための展示品を作ることではなく、あくまで対話し考えて制作を行うことなので、成果物に制作量やサイズの規定はなく、様々な形状やサイズへの挑戦があったし、思考した分の物量も生まれていた。制作後の焼成の段階では、全てがきれいに焼き上がり展示できるかどうかは最後までわからないということだった。

そんなプロジェクト一端を把握した上で、この展覧会自体もプロジェクトの過程として「考える」ための場として構成しようと、試行錯誤の中で制作された展示品群を同時に一覧できる平面を用意した。
陳列された展示品は、ワークショップの初期段階に作られたものもあり、焼成の段階で割れてしまったものも含め、素焼きの状態のもの、釉薬が掛けられ本焼きされたものも全て陳列し、思考した量をそのまま見せている。全体を俯瞰する中で見えてきた手法毎にグルーピングして名付けることで、この次に考えていく方向性を見定めるための場にもなっている。
来客者が、ガラス越しに観るのではなく、直近で手仕事の試行錯誤が感じられるように、展示品群の中に入れる動線を用意した。また、展示台に近寄らないと奥まで見えづらい高さとするなど、近寄りたくなる寸法を意識している。
展示台の素材は、展示品は完成された「作品」ではないことを示すため一般的な白背景にはせずに、下地素材でもあるラワン材を採用した。

URL
https://atelier.muji.com/jp/exhibition/564/

名 称 ATELIER MUJI GINZA「考える。益子の新しい伝統に向けて」展
施 主 株式会社良品計画
場 所 東京都中央区銀座 無印良品 銀座 6F ATELIER MUJI GINZA Gallery1
用 途 展示
設 計 ya
企画・運営 ATELIER MUJI GINZA
キュレーター 田代かおる
企画協力 MASHIKO Product
展示品協力 (エンツォ・マーリ)・永井敬二
施 工 HIGURE 17-15 cas
グラフィックデザイン 東川裕子
床面積 24.90m²
完成年 2019.11.29 〜 2020.3.8
写 真 尾原深水
Title Exhibition ― To think: Towards a new tradition in Mashiko
Client Ryohin Keikaku Co.,Ltd.
Location Ginza, Tokyo
Usage Exhibition
Site design ya
Planning・Management ATELIER MUJI GINZA
Curator Kaoru Tashiro
Planning Collaboration MASHIKO Product
Exhibit Cooperation (Enzo Mari)・Keiji Nagai
Site construction HIGURE 17-15 cas
Graphic design Yuko Higashikawa
Area 24.90m²
Date 29th November 2019 ~ 8th March 2020
Photo Shinsui Ohara